英語でプレゼンやスピーチをするとき、多くの日本人ビジネスパーソンにとって質疑応答 (Q&A)の時間は緊張のピークではないでしょうか。

発表内容は準備万端でも、いざ「Do you have any questions?(質問はありますか?)」と英語で尋ね、会場に目を向けると心臓がドキドキ…。予想外の質問が来たらどうしよう、英語でうまく答えられるだろうか、、、?と不安に感じるのは自然なことです。


実際、アメリカ人の約82%が人前で話すことに緊張を感じるというデータもあります​。
これは母語話者でさえ同様なのですから、英語での質疑応答となればなおさらです。


しかし、質疑応答はただ怖がるべき時間ではありません。それはオーディエンスと直接対話し、発表内容への理解を深めてもらうチャンスなのです。
質問が出るということは、あなたの話に関心を持ちもっと知りたいと思っている証拠でもあります。

上手に答えれば、聞き手のモヤモヤを解消しあなたのメッセージへの納得感を高めることができます。逆にうまく答えられないとプレゼン全体の印象が台無しになりかねません。

では、英語の質疑応答を成功させるためには具体的にどうすれば良いのでしょうか?


本記事では、日本人ビジネスパーソン向けに英語Q&Aセッションを乗り切るための10のコツを紹介します。

いずれも即効性があり現場で役立つ具体的なテクニックで、信頼性の高い専門家の意見やハーバード大学の研究などに裏付けられています。
また、質疑応答で使えるビジネス英語のQ&A表現30選(イディオムや定型フレーズ)も詳しい解説付きでまとめました。

これらの表現はプロらしさと親しみやすさを両立し、自習で練習することで英語力向上にもつながります。
読みやすいよう箇条書きと解説を組み合わせて構成していますので、ぜひ最後までお付き合いください。それでは早速、英語での質疑応答を成功させるためのポイントを見ていきましょう。


英語の質疑応答を成功に導く10のコツ
1. 質疑応答の時間を事前に計画し、冒頭で予告する
2. Q&Aを「対話の場」と前向きに捉えるマインドセット
3. 聞かれそうな質問を事前に予想し、回答を準備する
4. 質問は最後まで丁寧に聞き、まず理解する(傾聴と確認)
5. 回答は結論から簡潔に──伝わる構成で答える
6. 丁寧で誠実な態度を貫き、ポジティブな言葉遣いをする
7. 難しい質問や批判には冷静に対処し、相手の意図を汲む
8. 質疑応答の主導権を握り、時間と進行をコントロールする
9. 「質問がない…」沈黙への対策:質問を引き出す工夫
10. 最後にもうひと押し:Q&A後は笑顔で締めくくりメッセージ
英語Q&Aで使える表現・イディオム30選【徹底解説付き】
1.I’d be happy to answer any questions.(ご質問に喜んでお答えいたします)
2.Thank you for your question.(ご質問ありがとうございます)
3.That’s a great question.(それはいい質問ですね)
4.I’m glad you asked that.(その質問をしていただいて良かったです)
5.That’s an interesting question.(興味深い質問ですね)
6.If I understand you correctly, …?(私の理解が正しければ、…ということでしょうか?)
7.Could you clarify what you mean by ~?(~とは具体的にどういう意味でしょうか?)
8.Could you repeat the question, please?(お手数ですがもう一度質問を繰り返していただけますか)
9.To the best of my knowledge, …(私の知る限りでは、…です)
10.Off the top of my head, …(今ぱっと思いつく限りでは、…)
11.I’m not sure, but I’ll look into it.(確かなことが言えませんが、調べてみます)
12.I don’t have that information now, but I’ll get back to you.(現時点でその情報は持ち合わせていませんが、後ほど回答いたします)
13.I see where you’re coming from.(おっしゃる意図は理解できます)
14.That’s a valid point.(それはごもっともな指摘です)
15.Let’s discuss that offline.(その件はこの場ではなく直接お話ししましょう)
16.Let’s circle back to [the main topic].([主要議題]に話を戻しましょう)
17.Let me break that down.(それを分解して説明させてください)
18.I’d like to open that question to the audience.(その質問は皆さんにも伺ってみたいですね)
19.Please bear with me for a moment.(少々お待ちください)
20.Does that answer your question?(ご質問の答えになっていますでしょうか?)
21.I hope that makes sense.(ご理解いただけたでしょうか)
22.We have time for one more question.(あと一問お受けできます)
23.If there are no further questions, …(ほかにご質問がなければ、…)
24.in a nutshell(要するに、一言で言えば)
25.think on your feet(即座に機転を利かせる)
26.on the same page(認識が一致して)
27.play devil’s advocate(あえて反対意見を唱える)
28.throw a curveball(思いがけない難題を投げかける)
29.elephant in the room(皆が知っているのに触れられない問題)
30.beat around the bush(遠回しに言う、要点に触れない)

英語の質疑応答を成功に導く10のコツ

英語でのQ&Aセッションに自信を持って臨むためのポイントを10個に整理しました。ビジネス英語 Q&Aの現場で即使えるノウハウばかりです。それぞれのコツをまず箇条書きで押さえ、続いて詳細を解説していきます。

1. 質疑応答の時間を事前に計画し、冒頭で予告する


発表の一部としてQ&Aを組み込む: プレゼン計画時に質疑応答の時間と進め方を決めておきます。発表冒頭で「質問は最後にお願いします」などと伝え、聴衆に心構えをさせます
十分な時間を確保: 発表内容を詰め込みすぎず、Q&Aに十分な時間を割り当てます。「プレゼンを短めにしてもQ&Aを急かさない方が良い。質問が残ったままでは聴衆はあなたの提案を受け入れてくれない」とも言われます。


ビジネスの場では時間管理が重要です。まずは質疑応答の時間をしっかり確保しましょう。例えば30分の発表なら5分〜10分はQ&A用に取る、といった具合です。
そして発表の冒頭で「We will have about 10 minutes for Q&A at the end of the presentation.(プレゼン最後に約10分間の質疑応答の時間を設けます)」のように伝えてください。
聴衆は質問して良いタイミングを理解でき、プレゼン中に疑問点をメモしながら聞いてくれるでしょう。


また、プレゼン中に質問を受け付けるか否かも明示します。「途中での質問も歓迎します(Feel free to ask questions at any time)」なのか
「質問は最後にお願いします(Please hold your questions until the end)」なのか、最初に示しておけば聞き手も安心です。


さらに、社内発表などで想定人数が多い場合は質疑応答の司会役をあらかじめ決め、質問の順番管理やマイク渡しを手伝ってもらうとスムーズです。このように質疑応答をプレゼンの一部として計画・演出することで、落ち着いてQ&Aに臨む土台ができます。

2. Q&Aを「対話の場」と前向きに捉えるマインドセット



Q&Aを恐れない : 質疑応答は攻撃ではなく対話です。質問は関心の裏返しと捉えましょう。否定的に感じる質問でも、相手は「悪魔の代弁者 (devil’s advocate)」的に議論を深めたいだけかもしれません。
対話と思えばリラックス :Q&Aを「避けるべき試練」でなく「聴衆とのキャッチボール」と考えると心構えが楽になります。専門家も「多くの発表者はQ&Aをドッジボールのように捉えがちだが、対話と捉える方が有益だ」と助言しています。


質疑応答に入る前に、まず心の持ち方を整えましょう。Q&Aをネガティブに捉えていると、防御的・消極的な態度が出てしまいがちです。

スタンフォード大学の名物講師マット・エイブラムズ氏も「Q&Aをドッジボール(当て合いゲーム)のように感じると守りの姿勢になり声が沈みがちだが、対話だと思えばアプローチが変わる」と指摘しています。
実際、質問が出るのは発表内容に興味を持って考えてくれている証拠です。ハーバード大学のCaroline Webb氏も「質問してくれるのは聞き手が話にエンゲージしようとしているサイン。まずは感謝し、対話を楽しむ気持ちを持つことが大事だ」と述べています。

質疑応答は一方的なスピーチとは違い、双方向コミュニケーションの場です。そう捉えれば、「完璧に答えなければ」と構えすぎるプレッシャーも和らぐでしょう。

緊張を和らげる具体的な方法としては、質問に対する感謝や称賛の言葉をまず口にすることです。
定番フレーズである「Thank you for your question.(ご質問ありがとうございます)」や「That’s a great question.(いい質問ですね)」と返すことで、質問者への敬意と前向きに受け止める姿勢を示せます。
自分自身に対しても「これは敵対ではなく建設的な対話なんだ」と言い聞かせる効果があります。また、質問を受ける際には一度深呼吸してから答え始める、質問中は相手の目を見るなど、落ち着いて対話に臨むためのルーティンを持つのも有効です。

心拍数が上がったらゆっくり息を吐く、背筋を伸ばして自信のある姿勢を取るなど、メンタルとフィジカルの両面からリラックスする工夫をしましょう。


3. 聞かれそうな質問を事前に予想し、回答を準備する



想定問答集を作る: 発表前に「どんな質問があり得るか」を自分なりに洗い出し、回答案を用意します。。内容に関する基本的な疑問から、鋭い突っ込みや懸念点まで網羅しましょう。
周囲の意見も活用: 同僚や上司にも「どんな質問が来そうか」尋ねてみます。他の視点を取り入れることで盲点に気づけます。専門家は「過去の類似プレゼンのQ&A事例調査・同僚へのヒアリング・聴衆の立場でのブレインストーミング」を推奨しています。


質疑応答で焦らないための最大の備えは事前準備です。発表内容を作り込んだら、それに関連して考えられる質問をリストアップしましょう。The Art of Business Englishでは「聴衆が投げかけるかもしれない質問を、平易なものから批判的なものまで必ずブレインストーミングしておくこと」を強調しています。

例えばプレゼンテーマが新プロジェクトの提案なら、「予算やROIに関する質問」「代替案やリスクを問う質問」「導入スケジュールの詳細」など、あらゆる観点から質問を想定します。最悪のケースも想定しておけば、本番で不意打ちを受ける可能性が減り自信につながります。


効果的な準備方法として、次のステップが参考になります

1. リサーチ (Research) : 過去の似たテーマのプレゼンや会議で出た質問を調べる。業界イベントのQ&Aやオンラインフォーラムで議論された質問を参考にすると良いでしょう。
2. 調査・相談 (Survey): 同僚や専門家に「自分がこの聴衆だったら何を聞くか」意見を求める。他人の視点は自分では思いつかない質問を教えてくれます。
3. 内省 (Brainstorm): 聴衆の立場になって、「自分がオーディエンスなら何を知りたいか?」と想像する。利害関係者ごとに気にする点(例えば上層部は大局を、現場担当者は具体策を、顧客はメリットを…)を考えると多面的に質問を洗い出せます。


] こうした準備によって「こんな質問来たらどうしよう…」という不安が徐々に「どんと来い!」という自信に変わります。想定質問と回答例を社内でロールプレイ練習したり、一人で声に出してリハーサルするのも有効です。
可能なら英語に堪能な同僚に協力してもらい模擬Q&Aセッションをすることで、実践さながらにトレーニングできます。回答内容だけでなく英語表現も練習しておけば、本番でスムーズに言葉が出やすくなるでしょう。

4. 質問は最後まで丁寧に聞き、まず理解する(傾聴と確認)



相手の話を遮らない: 質問者が話している間は、相槌やアイコンタクトで関心を示しつつ最後まで耳を傾けます。途中で推測して答え始めないこと。
質問の意図を確認: 質問内容が不明確なときはそのまま答えず、「If I understand you correctly, …(確認ですが…)」などと要旨を言い換えて確認します。必要に応じて「申し訳ありません、もう一度よろしいでしょうか?」と聞き返してOKです。


] 質疑応答では聞く姿勢も評価されています。質問を途中で遮ったり上の空で聞いたりすると、質問者だけでなく他の聴衆にもマイナス印象を与えかねません。
まずは質問者にしっかり向き合い、相手の言葉を最後まで尊重して聞くことが大切です。
聞きながら適度にうなずいたり、「Sure」や「I see」など短い相槌を入れると、きちんと関心を持って聞いていることが伝わります。
質問が終わったら、一拍おいてから回答に移りましょう。この間を取ること自体が、落ち着いたプロらしい印象を与えますし、考える時間も稼げます。


] 質問内容を正確に把握するために、質問の繰り返し・言い換えも活用しましょう。
例えば相手が長い質問をした場合、「Let me summarize your question. You’re asking about A and B, right?(ご質問を整理させてください。ポイントはAとBについてですね?)」のように自分の言葉でまとめ直すと効果的です。

これは (1) 自分の理解を確認して的外れな回答を防ぐ、(2) 聴衆全体にも質問内容を共有する、(3) 答える前に考える時間を確保する、という一石三鳥のテクニックです。
質問者も「自分の質問をきちんと理解してくれた」と感じるでしょう。


] もし質問の一部が聞き取れなかったり意味が掴めなかったら、遠慮なく聞き返して構いません。
「I’m sorry, could you repeat the question?(すみませんが、もう一度質問を繰り返していただけますか)」や「Could you clarify what you mean by …?(…とは具体的にどういう意味でしょうか)」と尋ねましょう。

聞き返すのは失礼ではなく、真剣に理解しようとする誠実さの表れです。英語で質問が速すぎて聞き取れなかった場合も、SorryやPardonではなくもう一度説明をお願いするフレーズを使えば、相手も言い換えたりゆっくり話したり工夫してくれます。


] ポイントは、焦って即答しようとしないこと。質問を正確に理解してから回答に移る方が、結果的に簡潔かつ的確に答えられます。的外れな答えを長々と話すほうが時間の無駄ですし信用も下がってしまいます。
まずは「相手が本当に知りたいことは何か?」を見極めるため、落ち着いて傾聴と確認を行いましょう。

5. 回答は結論から簡潔に──伝わる構成で答える


最初に結論を述べる: 回答ではまず「Yes/No」「主要なポイント」など問いの答えを端的に示すよう心がけます。質問に対する自分の立場や結論を一文で伝えるイメージです。
必要な根拠や例を補足: 結論を述べた後、その理由や具体例を簡潔に付け加えます。ADD法(Answer→Detail→Describe value)のように、答え→詳細説明→付加価値の順で答えると論理的です


質問への回答は、わかりやすさと簡潔さが命です。特に英語では結論を先に述べ、その後に説明を加える「トップダウン型」の伝え方が効果的です。
質問に対してまずズバリ答えを言い切ることで、聞き手は要旨を素早く掴めます。その後に必要な理由やデータを補足しましょう。


例えば「このプロジェクトは成功する見込みがありますか?」と聞かれたら、まず “Yes, we are confident it will succeed.(はい、成功すると確信しています)” のように結論を明言します。
次に “The reason is that …(その理由は…)” と根拠を述べ、可能なら “For example, …(例えば…)” と具体例を挙げます。
最後に “Does that answer your question?(質問の答えになっていますでしょうか)” と相手に確認するか、”I hope that makes sense.(ご理解いただけたでしょうか)” と結ぶと丁寧です。


回答の構成には様々なフレームワークがありますが、前述のADD法はシンプルで使いやすいでしょう。

ADDとは Answer(結論)→Detail(詳細)→Describe the value(価値の説明) の略です。
まず質問に対する答えを述べ(Answer)、次に必要な詳細や背景情報を補足し(Detail)、最後にそれが相手やビジネスにとって持つ意味やメリットを付け加える(Describe value)という流れです。



例えば「新システムの導入は必要か?」という質問に対し
Answer →“Yes, it’s necessary(必要です).
Detail → Our current system will no longer be supported after 2025(現行システムは2025年以降サポートが終了します).
Describe value→ “Upgrading ensures security and gives us a competitive edge with new features(アップグレードによりセキュリティが確保でき、新機能で競争優位にもつながります).
といった具合です。聞き手は「必要なんだな」という結論と、その理由、さらにそれによるメリットまで一度の回答で理解できます。


もちろん全ての質問で厳密にこの形に当てはめる必要はありませんが、「先に答え、その後補足」という順序は常に意識しましょう。
また説明は質問に直接関係するポイントに絞り、冗長にならないよう注意します。

専門用語や社内用語はなるべく平易な英語に言い換え、誰にでも伝わるように心がけます。質疑応答では一つ一つのやり取りが短いほうがテンポも良く、聞き手の集中も続きます。
「簡潔に、しかし十分に」答えるバランス感覚を磨きましょう。

6. 丁寧で誠実な態度を貫き、ポジティブな言葉遣いをする


基本の礼節を守る: 質問者への感謝(Thank you for…)や共感(I understand…)をまず示し、回答後にも「お答えになっていますか?」と気遣います。どんな質問にも礼儀正しく対応する姿勢が信頼感を生みます。
嘘やはぐらかしは厳禁: 知らないことを聞かれても、知ったかぶりをしたり適当にごまかしたりしないでください。正直に「存じ上げませんが調べます」と伝え、後日フォローアップするほうがプロらしい対応です。


Q&Aセッションでは話し方だけでなく態度や言葉遣いにも気を配りましょう。
質問してくれた相手に敬意と感謝を示すことは基本中の基本です。たとえ答えづらい質問でも、まず “Thank you for your question.(ご質問ありがとうございます)” や “I appreciate you bringing that up.(その点をご指摘いただき感謝します)” といった一言を添えるだけで、場の空気は格段に良くなります。

回答後にも “Did I answer your question?(回答になりましたでしょうか)” と尋ねたり、”Thank you for asking that.(その質問をしてくださってありがとうございました)” と締めくくると丁寧です。
こうした所作は、あなたの人間的な余裕と誠実さを印象づけ、聴衆との信頼関係構築につながります。


一方で、絶対に避けるべきは不誠実な対応です。答えがわからないからといってでたらめを言ったり、曖昧に煙に巻いたりするのは厳禁です。「知ったかぶり」はすぐに見抜かれますし、信頼を損ねるだけでなく後で辻褄が合わなくなって大きな問題に発展しかねません。

The Art of Business Englishでも「決して答えをでっちあげてはいけない。もし嘘で乗り切ろうとしても十中八九見破られ、評判を落とすだけだ」と戒められています。
わからないことを聞かれた場合の適切な対処法は後述するコツ7で詳述しますが、基本は素直に認めて後で回答する約束をすることです。


また、言葉遣いはできるだけポジティブで前向きな表現を選びましょう。例えば否定的な質問に答える際も “It’s difficult to say.” のようにネガティブワードを使うより、“We’ll need to explore that further.(さらに検討が必要ですね)” のように前向きなニュアンスに変換できます。

「できません」より「この方法なら可能です」「問題ありません」より「大丈夫です」といった具合に、表現を工夫するだけで柔らかく聞こえます。
ただし、質問者の懸念を軽んじるような楽観的すぎる返答(”No problem!” など)も不誠実に映るので避けましょう。あくまで丁寧さと率直さをベースに、プラスの言葉を交えて回答することがポイントです。


最後に、質疑応答中のボディランゲージもチェックしましょう。
相手の目を見て(大勢なら質問者→他の聴衆にも目線を配る)、落ち着いた姿勢で話します。腕組みやポケットに手を突っ込むのは閉鎖的に映るので避けます。

笑顔やうなずきで親しみやすさを示しつつ、背筋を伸ばして堂々とした立ち姿でいることで「この人なら信頼できる」と感じてもらえるでしょう。

7. 難しい質問や批判には冷静に対処し、相手の意図を汲む



感情的に反応しない: 批判的・挑発的な質問を受けてもムッとした表情や攻撃的な言い返しは禁物です。深呼吸し、まず相手の懸念に共感しましょう。「おっしゃる点はもっともです」と認めた上で、自分の見解を冷静に述べます。
橋渡しのフレーズを使う: 「I understand your concern, and…(ご懸念は理解できます、その上で…)」のように共通点を見つけてから回答すると対立を和らげられます。それでも解決しない場合は「この場での議題から少し逸れるので…」と断って後回しや他の場に回す判断も必要で。


経営層へのプレゼンや社外向け発表では、時に厳しい質問やその場で即答が難しい専門的な問いが飛んでくることがあります。
こうした難問や挑戦的な質問に直面しても、決して感情的に反応せず冷静さを保つことが肝心です。

まずは質問者の意図を汲み取りましょう。相手は単に反論したいのではなく、真剣な疑問や不安をぶつけているのかもしれません。「なぜそんなことを聞くのか?」という背景を考えると、回答の糸口が見えてくることがあります。


効果的な対処法の一つは、部分的に相手に同意する(共感する)ことです。
ハーバード・ビジネス・レビューによれば、批判的な質問にはまず自分と相手の共通認識を示すと良いとされています。

例えば「あなたの計画にはリスクが多すぎるのでは?」という問いには、“You’re absolutely right that every project has risks.(おっしゃる通り、どのプロジェクトにもリスクはつきものです)” とまず認めます。
その上で “However, we have mitigation plans for the key risks, such as…(しかし主要なリスクには…のような対策を講じています)” と続ければ、単に防御するより説得力が増すでしょう。相手の立場・懸念を理解していることを示すことで、相手も耳を傾けやすくなります。


それでも議論が平行線をたどりそうな場合は、無理にその場ですべて決着させようとしないことも大切です。
例えば技術的に高度すぎる質問や、議題から逸れた指摘を受けた場合、時間内に十分な説明ができなければ “That’s an important point. It may be beyond today’s scope, but I’d be happy to discuss it with you afterwards.(大事な点ですね。本日の議題から少し外れるかもしれませんが、もしよろしければこの後個別にお話ししましょう)” と提案します。

Sherwood氏も「不適切な質問は ‘I don’t think that question is appropriate here. Perhaps you could come and see me afterwards.’ と後回しにしてよい」と述べています。ただし言い方は丁寧に、「not appropriate(この場にふさわしくない)」より「time is short(時間の関係で)」など穏当な理由付けをすると角が立ちません


また、質問を逆に相手に返すのも一つの戦術です。
例えば意見の異なる相手には “I see your point. What do you think would be an ideal solution?(おっしゃる点はわかります。では理想的な解決策は何だとお考えですか?)” と問いかけてみます。

相手自身に考えさせ建設的な議論に持ち込める可能性がありますし、一方的な追及モードを和らげる効果もあります。ただし、毎回これをやると「答えられないから聞き返している」と思われかねません。本当に必要な場面でのみ使うようにしましょう。


さらに、場合によっては聴衆全体に助けを求めるのも有効です。
例えば “That’s a complex issue. I’d like to open that up to the audience – what do others think?(複雑な問題ですね。皆さんはどう思われますか?)” と投げかけることで、議論を広げつつ自分が直接答えなくても済む状況を作れます。
これも頻繁には使えませんが、パネルディスカッション形式の場などでは有用でしょう。


要は、どんなに難しい質問も冷静に丁寧に扱うことです。質問者を論破しようとしたり、質問の意図を曲解して的外れな返答をしたりするのは避けましょう。誠実に向き合いつつ、必要なら上手に議論の軸をコントロールすることがプロの対応です。

8. 質疑応答の主導権を握り、時間と進行をコントロールする



回答が長引きすぎないよう注意: 一つの質問への回答が長くなりすぎると他の質問時間が無くなります。適度なところで切り上げ、詳細な議論は後日に回す判断も必要です。
複数の質問が出たら順序を決める: 「お一人ずつお願いします」と断ってから順番に対応します。一人が何度も質問する場合は「他の方の質問もお受けしたいので一旦ここまでで」と区切りを入れましょう。モデレーターがいる場合は協力してもらいます


発表者は質疑応答でもファシリテーター(進行役)の意識を持ちましょう。
聴衆との対話とはいえ、だらだらと終わりが見えないQ&Aでは締まりがありません。制限時間内で効率よく情報交換するには、話す側が主導権を握って進めることも必要です。


まず、一つ一つのやり取りに時間をかけすぎないよう気をつけます。これは自分の回答の長さにも言えることです。
伝えたいことが次々湧いても、一旦核心部分だけ答えたら「必要なら詳細は後ほど資料をお送りします」などと述べ、切り上げる勇気も大切です。特に持ち時間が限られる場合、優先度の高い質問に絞って答える判断力が求められます。

Matt Abrahams氏は「Q&Aでは自分が会話をリードする意識を持ち、回答する質問の範囲や時間を自ら設定すべき」と述べています。例えば「技術的な細部については本日は割愛し、主要なポイントに絞ってお答えします」と前置きしてから回答すれば、聞き手も納得しやすいでしょう。


聴衆から次々と質問が出る場合は、一度に一問ずつ対応します。
「ではまずあちらの方、次に前列の方、という順でお答えします」と宣言し、順番に当てていくとスムーズです。仮に一人の質問者が複数の質問を一度にしてきた場合、質問を分解して対処します。

「Let me break that question down. First, …(質問を分けてお答えします。まず…)」と断り、質問のポイントごとに順に答えましょう。途中で部分を忘れてしまったら “Did that cover all your points?(すべての点にお答えできましたか)” と確認し、抜けがあれば補足すればOKです。


また、一人の人ばかりが発言して他の人が質問しづらい雰囲気になる場合もあります。
その際は「Thank you. Now, I’d like to hear if anyone else has a question.(ありがとうございます。他に質問のある方はいらっしゃいますか)」と場を開きましょう。
別の人が手を挙げたら「では一旦この話題はここまでとさせていただき…」と区切って次に移ります。公平に発言機会を与えることで、聴衆全体の満足度が上がります。


大規模な会議やオンラインセミナーではモデレーター(司会進行役)を置くことも検討してください。
プレゼンター自身がQ&Aをさばききれない場合、司会者が「残り◯分ですので次が最後の質問です」や「チャットから代表質問を読み上げます」といった調整をしてくれると非常に助かります。
自分で進行する場合も、残り時間を見ながら「We have time for two more questions.(あと2問お受けできます)」などと随時アナウンスすると良いでしょう。


このように、質疑応答では発表者が適度にハンドリングしつつも聞き手への配慮を忘れないことがポイントです。
だらだら続けずキレのある進行を心がければ、聴衆にも「この人は場をコントロールできるプロだ」という印象を与えられるでしょう。

9. 「質問がない…」沈黙への対策:質問を引き出す工夫



自ら質問のきっかけを作る: 質疑応答を始めても誰も手を挙げない場合、自分で用意した質問を披露するのも一策です。「よくいただく質問ですが…」と切り出し自問自答する形で一つ回答してみます。そうすることで聴衆が質問しやすい雰囲気を作れます。
「種」を蒔いておく: プレゼン中に「あえて詳細説明しないポイント」や「考えそうな疑問」を残しておき、聴衆が質問をせざるを得ない状況を作るテクニックもあります。例えば「詳細はQ&Aでお答えします」と触れておくと、誰かが尋ねてくれるかもしれません。


プレゼン終了後、「質問はありますか?」と問いかけてもシーン…となる経験をした人も多いでしょう。
聴衆側も遠慮や緊張で様子見していることがあり、「誰も手を挙げない=関心がない」わけではない場合がほとんどです。そんな沈黙状態を打破するには、発表者側から積極的に働きかけることが大切です。


有効な方法の一つがセルフQ&Aです。誰も質問しないなら「では、よくいただく質問をご紹介しましょう」と自ら切り出します
例えば “One question I’m often asked is, ‘How long will this implementation take?’ Let me answer that…(よくある質問に「導入にはどれくらい時間がかかるか」というものがあります。お答えしますと…)” のように、自分で質問を提示し回答するのです。

この方法はMel Sherwood氏も勧めており、沈黙を破るきっかけになります。一度誰かが発言すれば他の人も続きやすくなるため、まさに「get the ball rolling(ボールを転がし始める=口火を切る)」効果があります。


他には、特定の聴衆に話を振るという手もあります。例えば社内向け発表であれば「◯◯さん、この新プランは御部署にどう影響しそうですか?」と名前を指名して尋ねてみる方法です。
突然当てるのはリスクもありますが、事前にその人に確認し「Q&Aで◯◯について質問してもらえますか?」とお願いしておく(=仕込み質問)と安全です。

実際の講演でも、仲間に最初の質問をお願いしておくケースは珍しくありません。「最初の質問者」が現れれば他の人も続きやすくなるので、有効な打ち手と言えます。


また、プレゼン内容にわざと「質問のタネ」を仕込む方法もあります。
これは上級テクニックですが、全てを話しすぎずあえて詳細を省いた部分を作り、聴衆に疑問を抱かせるのです。

例えば「AとBという選択肢がありますが時間の都合で詳細は割愛します」と触れておけば、「Bについて詳しく教えて下さい」という質問が誘発されるかもしれません。ただし不自然に情報を隠すと本末転倒なので、バランスが必要です。


いずれにせよ、誰も質問しない沈黙はごく普通に起こり得るものと捉えて準備しておきましょう。
焦って「本当にありませんか?」と急かすと余計に出にくくなるので、間を置いてから上記のような策を講じます。軽い雑談を挟んだり、「皆さん静かですね」と笑いを誘ったりするのも雰囲気を和らげます。

Q&Aは参加者との共同作業でもあります。聴衆から質問を引き出すのも発表者の腕の見せ所と考えてみてください。

10. 最後にもうひと押し:Q&A後は笑顔で締めくくりメッセージ



尻切れで終わらない: 質疑応答が終わったら、そのまま「ありがとうございました」で終わるのではなく、発表全体の締めの言葉を用意しておきます。
主メッセージを再強調: 最後の締めくくりでは、プレゼンのキーポイントや呼びかけをもう一度簡潔に伝えましょう。例えば「本日の提案が、今後の戦略に寄与すると確信しています。ぜひご検討ください。」のように、聴衆に持ち帰ってほしいメッセージで終えると印象的です。


Q&Aセッションが終わった後のクロージングも重要です。
せっかく発表全体を通して良い流れできたのに、質疑応答が終わった途端「では以上です…」と尻すぼみに終わってしまってはもったいないです。

聴衆にとってはQ&Aまで含めて一つのプレゼンテーションです。最後の最後にもうひと工夫して、強い印象を残す終わり方を目指しましょう。


具体的には、質疑応答が一通り済んだら結論のまとめを述べることです。
例えば「それでは、時間となりましたので質問を締め切らせていただきます。最後に一言…」と断ってから、発表の結論や訴求点をシンプルに繰り返します。

ハーバード・ビジネス・レビューでも「Q&A後に唐突に終わるのではなく、聴衆にメッセージを補強する機会を逃すな」と指摘されています。Wrap up(締めくくる)のひと言を用意しておけば、聴衆の記憶に残りやすく、また自分自身もスッキリと発表を終えることができます。


例えば新サービス提案のプレゼンなら、Q&A後に「改めまして、本日提案したサービスXが皆様の業務効率化に大きく貢献できると確信しております。ご清聴ありがとうございました。」のようにまとめます。
あるいはセミナー講師であれば「以上、皆様が英語のQ&Aセッションで自信を持てるようになる10のコツをお伝えしました。本日のポイントをぜひ明日から実践してみてください。Thank you!」といった感じです。

最後に軽く笑顔で聴衆を見渡し、深くお辞儀または一礼して終了しましょう。拍手が起これば笑顔で「Thank you」と応じてください。


質疑応答後の締めコメントを入れると、一連のプレゼンテーションにまとまりが生まれます。逆に何も用意していないと、Q&Aで中断した印象のまま終わってしまい聴衆も消化不良になる恐れがあります。
「あの人の話は最後までプロフェッショナルだった」と感じてもらえるよう、着地まで計算に入れたプレゼン設計を心がけましょう。

まとめ:英語の質疑応答を成功に導く10のコツ


以上、英語での質疑応答(Q&Aセッション)を成功させるための10のコツを解説しました。どれも即実践できるテクニックばかりですが、最初から全部完璧にこなす必要はありません。
まずは「笑顔で質問を歓迎し、落ち着いて一つ一つ丁寧に答える」という基本姿勢を意識してみてください。
その上で、質問の予測準備やフレーズの言い回しなど、本記事で紹介したポイントを一つずつ取り入れていきましょう。きっと英語でのQ&Aに対する不安が和らぎ、プロらしくスマートに受け答えできる自分に変化していくはずです。


では次に、実際の質疑応答で役立つ英語表現やイディオム30選を紹介します。
質疑応答の様々な場面で使える定型フレーズから、知っておくと便利なビジネス英語特有の言い回しまで網羅しています。ぜひ自分の引き出しに加えて、いざというときに使えるよう練習してみてください。

英語Q&Aで使える表現・イディオム30選


英語での質疑応答に役立つフレーズやイディオムを30個まとめました。各表現の意味や使い方を日本語で詳しく解説しています。実際のQ&Aシーンをイメージしながら、自分ならどう使うか考えてみましょう。

1. I’d be happy to answer any questions.(ご質問に喜んでお答えいたします)


質疑応答の始め方として最適なフレーズ。 プレゼン終了後に質問を促す際、「Any questions?」だけでは素っ気ない印象になりがちです。
その点 “I’d be happy to…” を使うと「質問大歓迎ですよ」という前向きで親しみやすい雰囲気になります。

「We now have time for questions, and I’d be happy to answer any that you have.(ただ今より質疑応答のお時間です。皆様の質問に喜んでお答えします)」のように使えば、聴衆も手を挙げやすくなるでしょう。
ビジネスシーンでは丁寧さが好まれるため、ぜひ覚えておきたい表現です。

2. Thank you for your question.(ご質問ありがとうございます)


質問者への感謝を伝える基本フレーズ。 質問を受けたらまずこの一言を返す習慣をつけましょう。
どんな質問にも丁寧に感謝することで、質問者はもちろん他の聴衆にも好印象を与えます。質問に即答できない場合でもこのフレーズで時間を稼ぎつつ頭を整理できます。

例えば「Thank you for your question. That’s an important point.(ご質問ありがとうございます。それは重要なポイントですね)」のように続ければ、相手を肯定しつつ回答にスムーズに繋げられます。

3. That’s a great question.(それはいい質問ですね)


質問を褒める定番フレーズ。 “good question” よりも “great question” の方がより誉めるニュアンスが強く、ビジネスシーンでよく使われます。
難しい質問や核心を突いた質問に対して「鋭い質問ですね」と肯定することで、質問者の面目を立て、場の緊張をほぐす効果があります。ただし連発しすぎると社交辞令に聞こえるので、多用は禁物です。
本当に答えに窮したときの時間稼ぎにも使えますが、その場合でも心からのトーンで言うのがポイントです。

4. I’m glad you asked that.(その質問をしていただいて良かったです)



質問の重要性を強調する表現。 これは「あなたがその質問をしてくれて嬉しい/助かります」という意味合いで、質問者への感謝と問題提起の有用性を示します。
例えばプレゼンで触れられなかった点を質問された場合に「I’m glad you asked that. I didn’t have time to cover it earlier…(その質問をしてくださって助かります。その点は発表中に触れる時間がなかったのですが…)」
と返せば、その質問が場にとって価値あるものだと認めることになり、質問者も安心します。

5. That’s an interesting question.(興味深い質問ですね)


答えがすぐ出ない難問への前置きにも使える表現。 「興味深い=簡単ではない」ニュアンスを婉曲に伝える便利なフレーズです。
例えば少し答えにくい質問を受けた際に「That’s an interesting question. I’ve never thought about it that way before…(興味深い質問ですね。その視点は考えたことがありませんでした…)」と切り出せば、ポジティブに受け止めつつ少し考える時間を作れます。
以降で自分の考えを述べれば、「きちんと考察して答えてくれた」と感じてもらえるでしょう。

6. If I understand you correctly, …?(私の理解が正しければ、…ということでしょうか?)


質問内容を確認する丁寧な言い回し。 質問を一度自分の言葉で要約し、「あなたの意図はこういうことですか?」と確認したいときに使います。
例えば「If I understand you correctly, you’re asking about the timeline, right?(確認ですが、ご質問はスケジュールについてでしょうか?)」のように言います。
こうすることで、誤解に基づく見当違いな回答を防げますし、相手にも「しっかり理解しようとしてくれている」と好印象を与えられます。ビジネスでは曖昧なまま答えるより、一旦確認する方がプロフェッショナルです。

7. Could you clarify what you mean by ~?(~とは具体的にどういう意味でしょうか?)


質問の意図や用語の意味を尋ね直す表現。 相手の質問が漠然としていたり専門用語が含まれていた場合、「clarify(明確にする)」を使って説明を求めます。
例えば「Could you clarify what you mean by ‘efficient’ in this context?(この文脈で「効率的」とは具体的に何を指しますか?)」のように尋ねれば、相手は自分の質問を言い換えてくれるでしょう。
“clarify” はビジネスで頻出する動詞で、「はっきりさせる」の意。シンプルに “What do you mean?” だとぶっきらぼうなので、このように丁寧に聞き返すとスマートです。

8. Could you repeat the question, please?(お手数ですがもう一度質問を繰り返していただけますか)


質問を聞き取れなかったときの丁寧な聞き返し。 プレゼン会場の音響や相手の発音の関係で質問が聞こえないこともあります。そんな時に「もう一度お願いします」と頼むフレーズがこれです。
単に “Pardon?” や “Sorry?” だけだとカジュアルすぎるため、ビジネスではもう少し丁寧に表現します。”I’m sorry, could you repeat ~”と”I’m sorry”を付けても良いでしょう。
聞き返すのは失礼ではなく、むしろ誠実さのアピールになります。しっかり理解するために必要なら遠慮なく使いましょう。

9. To the best of my knowledge, …(私の知る限りでは、…です)


自分の知る範囲で答える際の前置き表現。 質問によっては確実な答えが難しく、自分が把握している範囲で回答するしかない場合があります。
そんなとき “to the best of my knowledge” を添えることで、「自分の知っている限りでは」という但し書きをつけられます。
例えば「To the best of my knowledge, we haven’t had any security breaches this year.(私の知る限り、本年度はセキュリティ侵害は発生していません)」のように使います。
“As far as I know, …” と言い換えることもできます。事実関係に自信があるわけではないが自分の認識を述べる、というニュアンスを伝えられる便利なフレーズです。

10. Off the top of my head, …(今ぱっと思いつく限りでは、…)


即答で思い浮かぶ範囲の情報を述べる際の前置き。 質問に対しとりあえず現時点で思いつくことを答える時に使います。
直訳は「頭のてっぺんから」というユニークな表現ですが、要するに「今すぐに思い出せる範囲では」といった意味です。
例えば「Off the top of my head, our last quarter sales were about 3 million.(正確ではありませんが、第4四半期の売上は約300万だったと思います)」のように使います。
このフレーズを使うことで「手元に資料がないので正確ではないが」という断りを入れつつ回答できるため、聞き手も「あくまで概算なんだな」と理解できます。

11. I’m not sure, but I’ll look into it.(確かなことが言えませんが、調べてみます)


答えが分からない時の素直な伝え方とフォロー約束。 質問された内容が分からない/覚えていない場合、その場で適当な答えをするのではなく、率直に「よく分かりません」と言うべきです。
ただし単に “I don’t know.” では不十分で、その後に必ず “I’ll look into it.(調べておきます)” 等のフォローアップを付け加えましょう。
例えば「I’m not sure about the exact figures, but I’ll look into it and get back to you.(正確な数字は定かではありませんが、調べて後ほど回答いたします)」といった形です。
このように伝えれば、誠実さを示しつつ相手にも納得してもらいやすくなります。

12. I don’t have that information now, but I’ll get back to you.(現時点でその情報は持ち合わせていませんが、後ほど回答いたします)


手元に資料や情報がない場合の回答保留と約束。 会議やプレゼンでは詳細なデータをすべて覚えているとは限りません。その場合に使える丁寧な言い回しがこれです。
“get back to you” は「後で連絡する/回答する」という意味のビジネス定型表現です。
例えば「I’m afraid I don’t have the report with me today, but I’ll get back to you with the details.(あいにく本日はそのレポートを持っていませんが、詳細は後ほどお知らせします)」のように使います。
重要なのは、実際に後で回答を提供することです。約束したら守る、これが信頼を築く鍵となります。

13. I see where you’re coming from.(おっしゃる意図は理解できます)


相手の懸念・視点に共感を示す表現。 直訳は「あなたがどこから来ているか見えます」ですが、転じて「あなたの背景事情や言いたいことは分かります」という意味になります。
批判的な質問や懸念に対して、まず相手の立場を理解していると伝える際に有効です。
例えば「I see where you’re coming from, and you’re right that this is a significant investment…(おっしゃる懸念は分かります。そして確かにこれは大きな投資です…)」のように使い、続けて自分の見解を述べます。
対立しそうな場面でも、まず共感を示すことで相手の警戒心を和らげる効果があります。

14. That’s a valid point.(それはごもっともな指摘です)


相手の指摘に一理あることを認めるフレーズ。 自分のプレゼンに対する批判や弱点の指摘に対し、すぐに反論せずまず「おっしゃる通り」と認めることで、建設的な議論に繋げることができます。
例えば「That’s a valid point. We do need to consider the maintenance cost…(確かにおっしゃる点はもっともです。維持費についても検討する必要がありますね…)」のように使います。
“valid” は「妥当な・正当な」の意味。相手の懸念を真正面から受け止める姿勢を示すことで、その後の説明にも耳を傾けてもらいやすくなります。

15. Let’s discuss that offline.(その件はこの場ではなく直接お話ししましょう)


特定の質問・話題を後回しにする際の表現。 Q&A中に議論が本題から逸れ始めたり、詳細すぎる技術的質問などが出た場合、「offline(オフライン)」つまり公式の場を離れて話すことを提案するのがこのフレーズです。
例えば会議で「That’s an important question. Let’s discuss that offline after the meeting.(大切なご質問ですね。その件は会議後に個別に話し合いましょう)」と使えば、角を立てずに今は深入りしないことを示せます。
ビジネスではよく使われる表現で、「この場ではなく別途対応する」という意味合いです。言いにくい質問への逃げ道としても有効ですが、使いすぎると「何でも後回しか」と思われるので注意しましょう。

16. Let’s circle back to [the main topic].([主要議題]に話を戻しましょう)


脱線した議論を本筋に戻すフレーズ。 “circle back” は「一巡して戻る」という意味のイディオムで、会議や議論でよく使われます。
質疑応答で話題がそれたり、長引きすぎて他の質問に移りたいときに用います。例えば「Great discussion, but let’s circle back to the topic of budget.(興味深い議論ですが、予算の話題に戻りましょう)」のように使い、本来のテーマに引き戻します。
「話を元に戻す」は日本語でもよく言いますが、英語ではこの表現がスマートです。

17. Let me break that down.(その質問を分解してお答えします)


複数の論点を含む質問に段階的に答える際の一言。 “break down” は「分解する」の意味。質問に複数の部分やステップがあるとき、「順番に回答します」という前置きとして使います。
例えば「Your question has two parts. Let me break that down: first…(ご質問は2点あります。順にお答えします。まず…)」
のように述べれば、整理しながら回答できるので聞き手も理解しやすくなります。

18. I’d like to open that question to the audience.(その質問は皆さんにも伺ってみたいですね)


他の参加者の意見を募る際のフレーズ。 自分だけでなく聴衆にも考えてほしい問いが出たときに用います。
例えば難問やディスカッション向きの質問に対し、「That’s a great question. I’d like to open that up to the rest of the group – what are your thoughts?(良い質問ですね。それはぜひ皆さんにも伺ってみたいです。どのようにお考えでしょうか?)」と投げかけます。
これにより会場全体で議論を共有でき、回答を一人で背負わなくて済む利点もあります。

19. Please bear with me for a moment.(少々お待ちください)


回答前に間を取りたいときの丁寧な依頼表現。 “bear with me” は「我慢して付き合う」の意で、ビジネスでは「少しの間お待ちください」に相当します。
質問が難しく即答できないときや、資料を探す間などに「Bear with me for a second…(少しお時間ください)」と言えば、聞き手に待ってもらうことができます。
焦って沈黙するより、この一言でクッションを置く方がプロフェッショナルです。

20. Does that answer your question?(ご質問の答えになっていますでしょうか?)



回答後に相手に確認する丁寧な問いかけ。 自分の回答が相手の疑問に十分答えているか確かめるフレーズです。
英語のQ&Aでは締めくくりによく使われ、「あなたの求める答えになったか」を尋ねることで相手が補足質問しやすくなります。
答えっぱなしにせず、「この回答で大丈夫ですか?」と念押しする姿勢は丁寧で、相手への配慮を示します。

21. I hope that makes sense.(ご理解いただけたでしょうか)


自分の説明がちゃんと伝わったか不安なときの表現。
直訳は「意味をなしていると良いのですが」。自分の回答が複雑だったり長くなった後で、「ちゃんと意味が伝わりましたか?」と確認するニュアンスで使えます。
例えば詳細な説明のあとに「I hope that makes sense, let me know if you need further clarification.(伝わっていれば良いのですが、さらに説明が必要でしたらお知らせください)」と添えることで、相手が質問し返しやすくなります。

22. We have time for one more question.(あと一問お受けできます)


残り時間を知らせつつ質問を受ける表現。 Q&Aの時間が残り少ないときに使います。
「あと◯問」と具体的に伝えることで、聴衆にも締め切り感が伝わり、最後の質問を促すことができます。
例えば司会者的に「We have time for one last question. Who would like to ask?(最後の質問を一つお受けできます。どなたかいらっしゃいますか?)」といった具合です。

23. If there are no further questions, …(ほかにご質問がなければ、…)


質問が出尽くしたと判断して締めに移る前置き。 質疑応答を終える際によく使われるフレーズです。
「これ以上質問がなければ◯◯します」という形で、Q&Aを切り上げる合図になります。
例えば「If there are no further questions, I’d like to conclude the presentation.(ご質問がなければ、これにて発表を締めくくらせていただきます)」のように使い、静かに区切りをつけましょう。

24. in a nutshell(要するに、一言で言えば)



前述の内容を簡潔にまとめる表現。 質問への答えを手短にまとめ直す時などに使います。
“nutshell(木の実の殻)に入るほど短く”が語源で、「要約すると」の意味です。例えば「In a nutshell, our strategy is to focus on quality.(要するに、当社の戦略は品質に注力することです)」のように使います。
回答の最後に付け加えてポイントを整理すれば、聞き手の理解も深まるでしょう。

25. think on your feet(即座に機転を利かせる)


予期せぬ状況で素早く考え対応することを指すイディオム。
質疑応答では文字通り壇上で瞬時に考える力が求められますが、英語では “You have to think on your feet during Q&A sessions.”(質疑応答ではその場で素早く考えて対処しなければならない)といった言い回しをします。
“feet(足)で考える”というユニークな表現で、突然の質問にも頭を回転させる様子を指します。自分で使うというより、相手から「よくそんなすぐ答えられましたね!」と褒められるような場面で登場するかもしれません。

26. on the same page(認識が一致して)


意見や認識が同じであることを示すイディオム。 質疑応答では、質問者との理解にズレがないか確認することが大切です。
“on the same page” は「同じページにいる」、転じて「同じ考えを共有している」という意味です。
例えば「Just to make sure we’re on the same page, you’re asking about the pricing model, correct?(認識を合わせるために確認ですが、ご質問は価格モデルについてですよね?)」のように使います。
合意形成や認識合わせの場面で非常によく使われる表現です。

27. play devil’s advocate(あえて反対意見を唱える)


議論を深めるためにわざと異論を述べることを指す表現。 質疑応答で、相手が意地悪な質問をしてくると感じても、実は建設的な目的で “playing devil’s advocate” をしている場合があります。
元々は議論の練習のためにわざと反対側に立つことを指す言葉です。
「仮に反対の立場で考えると…」と自問する際にも「Let me play devil’s advocate here.(あえて反論する立場で考えてみます)」のように使います。質問者の意図を推し量る際に知っておくと良い表現です。

28. throw a curveball(思いがけない難題を投げかける)


不意打ちのような質問や要求をすることを指すイディオム。 野球のカーブボールになぞらえ、予測しづらい質問を「投げられる」場面で使います。
例えば「The last question really threw me a curveball.(最後の質問には完全に不意を突かれました)」のように、後日談で表現することが多いです。
自分が使うより、同僚との会話で「それは予想外の質問だね」という意味で登場するかもしれません。

29. elephant in the room(皆が知っているのに触れられない問題)


その場の誰もが認識している重要課題だが、公には議論されていない事柄。
プレゼンや会議で明らかな問題なのに誰も言及しない事を「部屋の中の象」に例えます。質疑応答で勇気ある質問者がこの “elephant in the room” を指摘してくれる場合もあります。
例えば「I’m glad you brought that up – it was the elephant in the room.(その点を指摘してくださって良かったです — 会場の誰もが気にしていたのに触れられていませんでした)」のように使われます。

30. beat around the bush(遠回しに言う、要点に触れない)


肝心なことをなかなか言わずに回りくどく話す様子を指すイディオム。
質疑応答ではお互い時間が限られるため、“Don’t beat around the bush.(遠回しに言わず率直に質問してください)” と感じる場面もあるでしょう。
“bush(藪)を叩いて回る”という表現で、本題を避けている様子を表します。自分が回答する際も “beat around the bushしない”、つまり核心に直接答えることを心がけたいですね。

まとめ:質疑応答は「準備」と「練習」で自信に変わる

英語での質疑応答は、準備不足だと不安に感じるものですが、しっかりと対策をすれば必ず成功率を高めることができます。

今回ご紹介したように、事前準備(想定質問と回答練習)、本番での心構え(対話として楽しむ)、基本スキル(丁寧な傾聴と簡潔な回答)、そして便利なフレーズの活用が揃えば、Q&Aセッションは怖くありません。

むしろ聴衆との双方向コミュニケーションを楽しみ、あなたの専門性や人間性をアピールできる絶好の機会となるでしょう。


質疑応答力は一朝一夕には身につきませんが、継続的な学習と実践で着実に向上します。
例えば社内ミーティングでも今日から早速、紹介したフレーズを一つ使ってみてください。最初はぎこちなくても、回数を重ねるごとに自然に出るようになります。

また、自信が持てないという方はプロのコーチングを受けてみるのも効果的です。Croversはビジネス英語の個別指導サービスを提供しており、英語プレゼンやQ&A対応力を実践的に鍛えることができます。
興味のある方はぜひ当サイトもチェックしてみてください。


最後までお読みいただきありがとうございました。英語での質疑応答のコツと表現を押さえたあなたなら、次のQ&Aセッションできっとスマートかつ堂々と受け答えできるはずです。自信を持って臨み、ビジネス英語のQ&Aを成功させましょう!


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